第二部 9.紅蓮の焔 -永遠の闇の国の物語-

 約束の刻限が近付いて、光太郎たちの一行はゴクリと息を呑んだ。
 来た時と同じように漆黒の外套を纏っている黒騎士のユリウスを筆頭に、フードを目深に被っていて素性の判らない沈黙の主がその名の通り、沈黙して立っていた。
 馬を与えられたバッシュは幼いケルトを前に乗せると、傍らの馬にひらりと跨った、人間の支配する国で貴族の息子として育ったアリスの華麗な手綱捌きに、蜥蜴面では表情の読めないポーカーフェイスの眉をヒョイッと上げて見せた。
 彼らが逃げ出すことに懸念…するはずもないユリウスは、唯ひとり、傍にさえ在ればそれでいい、漆黒の髪を持つ少年の身体を軽々と抱き上げると、眉を寄せる光太郎は馬上の人となっていた。

(…シュー。俺、もっと遠くに行ってしまうよ)

 寂しくて、悲しくて…気付いたら鼻の奥がツンとして、泣きそうになっている自分に気付いて慌てて頭を左右に振った光太郎は、男は涙を易々と見せてはいけない、と言った獅子面の魔物の顔を思い浮かべて溜め息を吐いた。
 泣くわけにいかない。
 自分が決めたことなのだから、このまま永遠に離れることになったとしても…

(それは嫌だ。絶対に俺、あの懐かしい闇の国に戻ってみせる!)

 キュッと下唇を噛んで、強い表情で決意する光太郎を、愛馬の手綱を掴んでいるユリウスは、感情も何もかも全て吸い込んで、夥しい殺気しか纏っていない暗黒の鉄仮面の奥からひっそりと見下ろしていた。

(何を考えている。残す魔物の安否か…それとも、お前を救出すべく迫る魔物の安否か?)

 ユリウスは気付いていた。
 何もかも全て、この儚げな少年が必死で吐いた嘘など、地獄の底から甦らざるを得なかったユリウスには、造作もなく見抜ける可愛らしい嘘などお見通しだった。
 だが、それでも、腕のうちに抱いてしまったぬくもりを、今更失うつもりなどさらさらなかった。

「お前を、何者にも渡しはしない」

「…え?」

 ポツリと、自分を見下ろす鉄化面の向こう、くぐもった声音に小首を傾げて見上げてくる少年に、その直向な眼差しに、ユリウスの強張って固まってしまった心も、その殺意に揺らぐ双眸すら、ふと和んで、頬の緊張まで緩んでしまう。

「いや、気にするな」

 ふと笑うユリウスに、光太郎は不安そうに首を傾げたが、それでも小さく笑って「うん」と頷いた。

(ラスタランの都に入ってしまえば、魔物とて容易に手出しはできないだろう)

 そうすれば、ユリウスの杞憂は消えてしまう。いや、必ずしも消えると言うわけではないのだが、暫くは光太郎を手許において、崩れ去る世界の均衡と同じように、何れ手離してしまうだろう呪われたこの魂を今暫くは引き留めておけるだろう。

(だが…)

 今は容易には動けない。
 足手纏いを3人も抱え、ラスタランの希望である沈黙の主も同行する今、すぐさまラスタランの都に戻るには危険すぎるのだ。

「では、出立する」

 沈黙の主が厳かに、見送るもののいない砦を振り返ることもなく、彼は暗黒の馬に跨る最大の腹心に呟いた。
 時が来たと、光太郎はギュッと目蓋を閉じて、馬の鬣に噛り付いた。
 まだ、この場所は闇の国に近かった…漆黒の馬が嘶いて地面を掻くと、一行は初めはゆっくりと、次第に速度を増して暗黒の森を走り抜ける。
 遠くになる懐かしくて大好きなの国に、光太郎は心を引き千切られる想いで強制的に別れを告げねばならなかった。
 何度も泣きそうになって、それでも唇を噛んで心の痛みに耐えようとする健気な少年に、お供のバッシュはそっと眉を寄せていた。
 助けてやりたい、助けてやりたいのに、首を戒める忌々しい首輪が、バッシュから魔物としての魔力や力を奪い去ってしまっていた。

(流石に、オレひとりで得体の知れない沈黙の主は勿論、このユリウスとか言う男を相手するのはしんどいけどよ。光太郎を逃がすぐらいはできるのになぁ)

 力さえ戻れば…しかし、それはどうすることもできなかった。
 黙々と馬を駆る一行は、その日のうちに目指す第五の砦に到達することができた。
 砦…とは言っても、セスが護る第二の砦とは様相を大きく異ならせている。
 セスの砦が要塞とすれば、第五の砦は瀟洒な古城と言った趣だ。
 この砦の周辺には魔物を寄せ付けない結界が、高等神官たちによって張り巡らされていた。だから魔軍も怯んで襲うことはない。
 つまり、ユリウスが選んだ砦は、魔物にとっては難攻不落の難所だったのだ。
 唯一懸念されるバッシュは、今や死神にやんわりと首を掴まれているような首輪のおかげで、皮肉にも魔力も力も失っているせいか、その結界内に易々と入り込むことができた。だが、ひとたび、その首輪を外して真の力を取り戻してしまえば、結界の効力が発動し、その身体は粉微塵に吹っ飛んでしまうだろう。
 嘶く馬から降りたユリウスに抱えるようにして降ろしてもらった光太郎は、恭しく出迎えるこの砦を任されている初老の神官に、暗黒騎士と沈黙の主が何かを指示するなか、今来たばかりの道を途方に暮れたように見詰めていた。

(どこまで来てしまったんだろう)

 闇の国が支配する世界を、知っているようで、実は全然知らない、あの魔城の中が世界の全てだった光太郎には、ここが何処で、魔城との距離も、ラスタランとの距離もさっぱり判らなかった。

『光太郎、おい、大丈夫か?』

「あ、バッシュ。うん、ちょっとお尻が痛いけどね」

 アハハハッと笑ったら、蜥蜴面の魔物はホッとしたように吐息したようだ。

「なんだろね、あの人たち。すっごい飛ばしちゃって。見て、手に肉刺ができちゃった!」

 ブーッとぶーたれるように唇を尖らせた可愛らしいアリスが2人の間に割り込むようにして両手を広げると、バッシュはこの野郎とよく見ないと判らないのだが鼻に皺を寄せるたが、光太郎はビックリしたように真っ赤になっている手を覗き込んだ。

「うっわー…痛そうだな。後で手当てしてもらおうよ」

 ソッと眉を寄せる光太郎に、アリスはくすぐったいような気持ちになって、「え~、それほどでもないしぃ」と雪白の頬を染めて微笑んだ。
 具合の悪そうなケルトに気付いて、光太郎がその様子を見ようと上体を屈めたその時。

『!』

 不意にその身体は強い力で抱き上げられてしまった。

「わわ?!」

「何をしている?来るんだ」

 黒の篭手に覆われた掌で顎を掴まれ、腰を抱かれたまま驚いたように目を見開いた光太郎の双眸の先に、鉄化面の向こうに揺らめくようにして、滴る鮮血のような紅蓮の双眸が見詰め返していた。

「ゆ、ユリウス。う、うん、判った」

 素直に頷いたものの、ハタと気付いた光太郎は、紅蓮に燃えるような双眸を鉄仮面の向こうに見据えて、慌てたように口を開いた。

「ユリウス!ちょ、ちょっと待って」

「…どうした?」

 丁度目の高さまで降ろして抱え直すユリウスに、光太郎はその肩に手を添えながら首を傾げてみせた。その小動物のような仕種に、どれほど暗黒騎士の心が癒されているか、この場に居る誰しもが理解などしていないだろう。

「アリスが手を怪我しているんだ。それと、ケルトも具合が悪そうだし…できたら治療と、それから少し休みたいんだけど、ダメかな?」

「構わん。アリスとケルトは医務の神官に任せよう。魔隊長は…元気そうだがな」

 ユリウスは即答したが、チラッと鉄化面の奥から蜥蜴の親分を見ると、皮肉げな口調の語尾で笑った。

『ピンピンしてて悪かったな』

 バッシュが苛々したように腕を組んで顎を突き出すと、ユリウスは首を左右に振ってニヤッと笑ったようだ。

「そうでなくては困るだろ?お前は光太郎を護ると言う使命があるのだからな」

 バッシュはムッとしたように牙をむいたが、暗黒の騎士にとってそんなものは蚊でも止まった程度のどうでもいいことなのだ。

「では、入城するぞ」

 バタバタと砦から現れた神官の装束に身を包んだ少年たちが、ユリウスや沈黙の主、バッシュとアリスの馬を慌てたように砦の内部に設置されている厩に引き連れて行ってしまった。

(へー、この砦はまるでお城みたいなんだな)

 ユリウスに抱き上げられたまま、彼の肩に手を添えてキョロキョロと潜り抜ける砦を興味津々の眼差しで見渡す光太郎は、その造りに驚いているようだった。
 ともすれば小さな城のような建造物は、ぐるりと城壁に囲まれて、唯一の出入り口は今し方後にした城門しかないようだ。

(攻め込まれたら終わりっぽいけど…)

「この砦には結界が張ってある。易々と攻め込めまいよ」

 光太郎の考えなど見通しているのか、ドキッとしたように見詰めてくる光太郎の顔を、鉄仮面の向こうからユリウスは紅蓮の双眸を細めて見返した。
 これだけ感情が読み取れてしまう少年なのだ、苦い嘘の匂いも嗅ぎ分けたのだが…不思議と怒る気がしないのは、ソッと肩に添えられた掌のぬくもりが、心の奥底にポッカリと口を開いた、底知れぬどす黒い闇に穏やかなぬくもりを与えているからなのか。

「そ、そうなんだ。あれ?でも結界って…」

 そこまで呟いた時、前を行く沈黙の主に、先ほど出迎えた初老の神官が恭しく頭を垂れて口上を述べた。

「沈黙の主よ、よくぞご無事で参られました。伝達を受けた際には御身を案じるあまり…」

「下手な口上は良い。ディリアス、それよりも戦況はどうだ?」

 長身の沈黙の主がサッと片手を上げて疎ましげに制すると、ディリアスと呼ばれた神官はハハッと畏まって組んだ腕を上げるようにして頭を下げた。

「戦況は芳しくはありませぬが、何分、黎明の期に入りますれば、魔物どもの動向も今暫くは落ち着くかと…」

「なるほど!一進一退に変わらんと言うことか」

 低い声で唸るように呟いた沈黙の主は、フード付きの漆黒の外套の裾を翻して、うんざりしたように歩調を速めて城内に姿を消してしまった。

「ひぃ!」

「あわわわッッ?!」

 光太郎が訝しそうに眉を顰めて沈黙の主の背中を見送っていると、不意に背後から悲痛な声が上がって、驚いたようにユリウスの肩から身を乗り出すようにして少年は背後を振り返った。振り返ったその先には、普段は魔物など見たこともないのだろう、長旅に草臥れているだろう沈黙の主の腹心にして暗黒騎士の身の回りの世話にと恭しく馳せ参じた神官たちが、バッシュを見て悲鳴を上げたのだ。

「失礼しちゃうなぁ。バッシュはこう見えても、ちっともおっかなくないのにさッ」

 思わず神にその身を捧げた神官ですら頬を染めてしまうほど、愛らしく可憐なアリスが腰に手を当てて唇を尖らせると、件の蜥蜴の親分のような魔物はやれやれと溜め息を吐いた。

『お前だけだ。んなこと言うのは、絶対に!お前だけだ』

 こん畜生とバッシュが思っているのが手に取るようによく判るから、さらにアリスは増長して胸まで張って顎を突き出した。

「僕みたいなカッワイイ子に手も出せないんだから、神官さまなんて食べたりしないでショ」

『~お前なぁ』

 首を戒めるこの忌々しい首輪さえなければ、今すぐアリスなど片手で絞め殺してやるものを…と、バッシュが思っているかどうかは謎だったが、常にポーカーフェイスであるはずの蜥蜴面は、アリスを前にすると自慢の無表情も功を奏さなくなってしまう。
 歯噛みするバッシュに向かって、光太郎は思わずプッと噴出して、ケラケラと笑ってしまった。

「バカなことばっかり言ってたら、ケルトに笑われるって」

 バッシュたちの傍らで青い顔をしてはいるものの、困ったように眉を寄せている小さな少年は、そんな風に光太郎に振られてしまって、さらに困惑したような顔をしてしまう。

『…ケルトをなぁ、困らせるワケにはいかん』

 フンッと鼻を鳴らして外方向くバッシュに、アリスがムゥッと眉を寄せたその時だった。
 ふと、苦笑が漏れたのは。
 思わずバッシュたちが振り返ると、光太郎を抱き上げたままのユリウスが肩越しにチラリと見遣って、苦笑していたのだ。
 冷たい鉄仮面は一見すると紅蓮の双眸しか覗かないためか、重々しい威圧感と殺気と、人間らしい感情などは皆無で、恐ろしさしか印象を与えないのだが、今のユリウスは仕方ない連中だとでも思っているのか、鮮血の滴るような紅蓮の双眸を細めて笑っているように見えるのだ。
 だからこそ、仮面の持つ、物言わぬ威圧が今は薄らいで、バッシュたちはバカ話に花を咲かせることもできたのだろうが…

「この砦にも、そう長くは留まらん。無駄口を叩かずに部屋に行け」

 口調は然程不機嫌でもなく、あれほど魔物を憎悪し、寄らばその腰に下げた剣の露にしていたにも拘らず、その気配は鳴りを潜め、国に待つ部下が見れば驚きに卒倒するほど、暗黒の騎士は穏やかに命じたのだ。

『あー、そうだな。こんなことしてても疲れは取れねぇ。行くぞ、アリス、ケルト』

「そーだ、ケルト具合が悪いんだったっけ?神官さま、僕たちの部屋ってどこなの~?」

 漸くハッと我に返ったバッシュは、剣呑に頷いて、苛々したように言ったが、まるきり無視のアリスが具合の悪そうな青い顔をしたケルトを気遣いながら、今でも怯えている神官たちに花が綻ぶように笑って小首を傾げた。
 だいたい、こうすればどんな頑なな心の持ち主でも、頬を緩めて大概の我侭は聞いてくれる。
 アリスが取得している処世術だ。
 そんな連中を見ていた光太郎は、抑えきれないようにうぷぷぷっと笑っている。
 ビクビクと怯えている神官たちに促されて、やれやれと肩を叩くアリスと、腰を拳で叩いているバッシュ、その蜥蜴の親分の甲冑のうえから纏った外套を確り掴んでいるが具合の悪そうなケルトがぞろぞろとついて城内に入ってしまうのを、矢張り光太郎を抱えたままの暗黒騎士は見送るままで行動を起こそうとしない。
 目許に涙を浮かべて、久し振りに笑っていた光太郎は、ふと、そんなユリウスの態度を怪訝に思ったのか、訝しそうに首を傾げて見下ろした。

「!」

 思わずハッとしたのは、笑っている光太郎の顔を、ユリウスの紅蓮の双眸がじっと見詰めていたのだ。

「な、なんだよ?」

「オレに捕らえられてから、その様な顔を見るのは初めてだからな」

 ふと呟くように言われて、光太郎はキョトンッとしてしまった。

「あれ?そうかな…俺、バッシュたちといるといつも笑ってるような気がするんだけど」

 アリスが加わってからと言うもの、確かによく笑うようになったよなぁ…と光太郎は考えたが、だが、矢張り闇の国から遠いところに来てしまった不安から、いや、それ以前に、目の前に居るこの魔族にとって脅威でしかない暗黒騎士に対して警戒していないと言えば嘘になってしまう。
 だからこそ、彼の前で笑うことは殆どなかったのではないかと合点がいった。

「それは、その…仕方ないと思うんだ。俺にとっては故郷みたいに大切な場所だから。その場所から遠いところに来たのに、笑ってなんかいられないよ」

 それは尤もな理由だったし、光太郎の場合、問答無用の理不尽な強引さで連れて来られてしまったのだ。不安を感じてソッと眉を顰めたとしても、ユリウスが腹立たしく思うのは筋違いと言うものだ。
 何より、だからと言ってユリウスが腹を立てているのかと言えば、けしてそうではなかった。
 今の言葉は切々として、本心から出た本音だと逸早く気付いていたからだ。

「だが、お前は笑え」

「…」

 悲しそうに眉を顰めて見下ろす光太郎の頬に、暗黒の篭手を嵌めた手の甲を当てて、僅かに覗く紅蓮の双眸を細めたユリウスは言った。

「お前は今後、ラスタランにその身を置くことになる。オレの傍で、お前は寵姫として傍に仕えるのだ」

 ユリウスの声音は低かったが、そこには絶対的な支配を意味する腹の底が痺れるような威圧を含んでいるようだった。
 光太郎は溜め息を吐いた。

「チョウキ…ってなんだよ?アンタの言ってることって、たまに判らないんだよなぁ」

 何か重要な言葉であることは確かなのだが、その前の、ユリウスの言った「ラスタランにその身を置くことになる」の台詞に、果てしなく落ち込みそうになっていた光太郎の、それは精一杯の強がりだった。
 それが判っているのかいないのか、ユリウスは真摯な双眸をフッと緩めて、手の甲で撫でていた頬から手を離し、改めてその頤を掴んで不安に揺れる顔を覗き込んだ。

「オレの傍で笑い、その顔をオレにだけ向けておかなければならない…と言うことだ」

「んな、無茶な」

 何を言ってんだか…と、光太郎は頬の緊張をちょっと緩めて、思わずクスッと笑ってしまった。
 たとえラスタランに行っても闇の国を思う心…いや、獅子面の魔将軍であるシューを想う心はけして忘れないだろう。そんな自分がユリウスに微笑みかけない…と言うワケはないだろうが、ユリウスにだけ見せるなんて器用な芸当はできないと言うのが、率直な気持ちだ。
 たとえ、敵軍にある最強の敵だったとしても、傷付いたアリスやケルト、ましてやバッシュを気遣うこの男を、光太郎は内心では嫌いになれないでいた。
 だから、笑えと言えば笑うのだろうが、自分だけにしろと言うのは無茶な命令だと思った。

「ユリウスも面白いこと言うよなー、そんなのできるワケないだろ?」

 ケタケタと笑う光太郎を、どこか眩しそうに見詰めていたユリウスは、目蓋を閉じてフッと笑ったが、それ以上は何も言わなかった。
 仕方なく抱き上げられたままだとは言えクスクス笑う光太郎は気付かなかった。
 自分を抱えた男がその腕に力を込め、漆黒の鉄化面の奥で、滴るように濡れる紅蓮の双眸を細めて嗤ったことを。
 たとえ、光太郎が泣き喚いて懇願したとしても、ラスタランに足を踏み入れたその瞬間から、その身体も心も何もかも全てに自由など与えはしないと、仄暗く揺れる欲望と強い意志を秘めた紅蓮の双眸の奥で、チカリと瞬く不吉な光の存在に…