12  -EVIL EYE-

 世界中がエヴィルと言う化け物を当たり前に受け入れていることを、何故か俺は知らなくて、登校途中の女子とかが黄色い声を上げながら噂してるのを耳にしても、どうしても信じることができない。
 だいたい、どうして俺だけが忘れてるんだ?
 世界には68億人も人がいるんだから、そのうちの何人かは俺みたいにエヴィルのこともヤツ等を狩るハンターの存在も、何かがあって終わってしまった『クリスタルガーディアン計画』のことも、何もかもさっぱり忘れてるヤツとかいるのかな。
 居るだろうとは思うけど、俺の周囲にはそれらしいヤツは独りだっていない。それどころか、信じ難いってのに、エヴィルそのものは、俺の傍にはいるんだよなぁ…
 はぁ…と溜め息を吐いていたら。

「ッ?!」

 下駄箱に靴を入れて上履きを取り出そうとする俺の背後から、イキナリグイーッと身体を押し付けるようにして声を掛けてくるヤツがいる。

「あ・い・ば・くん♪」

「…ぐるじ…おま、バカだろ?!」

 長身のクラスメイトはニヤニヤ笑いながら薄っぺらい学生鞄を片手に、俺を下駄箱でプレスしようとしやがる!な、何を考えてるんだ、コイツは。
 下駄箱に押し付けられて苦しがる俺を丸っきり無視のソイツ…クラスメイトなのにエヴィルと言う、女子には王子様扱いされる兵藤要だ。

「なんだよ、沈んだ顔してさ。朝っぱらからシケてんなよ!パァッといこうぜ♪」

 いいよなぁ、悩みのないエヴィルは。
 思わず呆れ果ててモノも言えないくなりそうな俺に覆い被さるようにして、兵藤は背後からギュウッと抱き締めてきたんだ。
 もうすぐ予鈴がなる、遅刻野郎どもを除いて生徒も先生の影も鳴りを潜めた玄関で、兵藤は俺の耳の後ろをベロッと舐めてきた。

「…ん!」

 くすぐったいようなヘンな気分になって思わず声が出そうになったけど、慌てて唇を噛み締めると、面白がるように俺を両腕に閉じ込めたエヴィルはクスクスと笑った。

「1時間目は自習だってさ。フケるだろ?」

「…ああ」

 頷くと、満足そうに笑う兵藤に腕を引かれて、俺はムッツリと頬を赤くしたままで大人しく北側校舎の2階にある、誰も使わないトイレの個室に連れ込まれた。

「…んぅ!…ン……ッ」

 長身の兵藤と狭い個室の中で抱き合うのも一苦労だってのに、ヤツはすぐに貪るようにして俺の口を塞ぐと、長い舌を絡める濃厚なキスをしながら、シャツをたくし上げるようにして素肌を弄ると、キスに反応する敏感な乳首をキュッと抓みやがったんだ!

「…や、……よけ、なことッ、すんな!」

「駄目だって、相羽。こう言うことにも慣れないとな」

「…ッ!」

 キスの合間にニヤニヤ笑う兵藤をムカつきながら見上げたけど、俺はそれ以上は何も言わずにフイッと目線を逸らしていた。
 こんなこと、本当はしたくないんだ。
 でも…

「ほら、相羽。どうする?昨日はできなかったけど、今日はコレ、舐めてみる?」

 わざとらしくジッパーの音を響かせてチャックを下ろした兵藤は、相変わらずデカいペニスを取り出して、半勃ちしているそれを軽く扱いて見せながら言ったんだ。

「うぅ…」

 舐めるのか、それ?舐めるモンなのか??
 向かい合うようにして狭い個室にいる俺は、俺の腿の付け根辺りで揺れるそれを見下ろして、この上ないく嫌なものを見てしまったように溜め息を吐いてしまった。

「まぁ、別に後ろを慣らすのにコレを舐める必要はないと思うけどさ。でも、痛いのが嫌なら舐めておいた方がスムーズかもな。カタラギのは見たことないから判んねーけど、舐めてやったら喜んですぐに終わるかもしれないぜ」

 声音はニヤついているからいまいち信用できないんだけど、俺はそれでも、蓋の閉まっている便座に腰を下ろすと、丁度目の前で兵藤の手に支えられて揺れている、半勃ちから少し硬度を増したみたいなペニスを見詰めていた。

「うっわ、マジでヤバイな。スゲー、エロイ気分になる♪」

 やっぱ、愉しんでるだけじゃねーかと胡乱な目付きで見上げたら、俺はどっちでもいいよなツラをして見下ろしてくるから、内心で『嫌だ』を連呼しながらも、俺はもう一度溜め息を吐いて、ギュッと目を閉じると兵藤のペニスに舌を伸ばした。
 口を開けて舌を伸ばして、舌先が触れるか触れないかで…

「そんなんじゃ駄目だって言ったろ?」

 興奮に目許を染めた兵藤はペロッと下唇を真っ赤な舌で舐めると、俺の後頭部を掴んで一気に股間を押し付けてきた!

「…んぐぅッ?!…ぐ……んぅッ」

 咽喉の奥を犯す質量と重量を持つペニスのムッとした雄の匂いが鼻腔に洩れて、俺は吐き気を催したってのに、兵藤はまるで意に介した風もなく、荒い息を吐きながらグイグイと腰を前後に揺らすんだ。
 その度に咽喉の奥を突かれて、俺は生理的なものと息苦しさとで目尻に涙を溜めながら、目蓋は閉じたままで必死に教えられたとおり、舌を蠢かしてペニスに唾液を擦りつけた。

「…はぁ、イイ感じだ。その泣き顔もそそるし、カタラギが目を付けるのも頷けるな」

 眉間に皺を寄せて、必死で口腔を犯すペニスに出て行って欲しくて、頬に一滴涙を零しながら奉仕する俺の頭を、今度はゆっくりと撫で、それから空いている方の手で口いっぱいに自分を含んでいる俺の頬に、含みきれずに顎へと滴る唾液を指先に絡めて塗りこめるようにして撫でるんだ。

「ん、…ふ……ん、ん…ッ」

 鼻から抜けるような声を出してペニスを必死に舐めている俺の頬を撫でる兵藤は、何が楽しいのかふと、俺の肌蹴たシャツから覗く乳首に指先を這わせたんだ。

「ふ…ッッ?!」

 ギョッとして目を開いて兵藤を見上げたら、ヤツは目許を染めて、それでなくても綺麗な顔が、ドキッとするほど淫靡に彩られていて、俺はペニスを咥えてるって言う情けない格好をしてるってのに、目の遣りどころに困って目線を泳がせてしまった。
 そんな俺に、兵藤の声が降ってきた。

「そうだ、その気になるのにさ。相羽もオナッてみたらどーよ?」

「んぶっ?!…ふんッ、ふんッ」

 思わず歯を当てそうになったけど、あまりのことに目を見開いて兵藤を見上げると、嫌だと言って首を左右に振ったのに、ヤツはそれこそ悪魔…もとい、エヴィルの本性みたいなツラをしてニタリと笑ったんだ。

「その方が、早く慣れると思うぜ?」

「…ぅ…んぅ…」

 グリッと口の中のペニスが暴れて、俺は切なげに鼻から息を吐くしかない。
 どうやら兵藤は、そうでもしないと、この顎が草臥れる行為を延々と続けるぞと脅してるみたいだ。
 俺は片手で兵藤のペニスを支えながら、空いてる方の手でチャックを下ろすと、トランクスの中に手を突っ込んでヤケクソで握ろうとして…ビビッた。
 だって、信じられるかよ。こんな屈辱的な行為を強いられてるってのに、俺、勃起してるんだ。

「苦しいよ~って顔覗かせてんじゃん。出してやれよ、ホラ」

 唆すように腰を揺らされて、俺はもう、後頭部に兵藤の手はないってのに、自分から舌先を絡めてヤツのペニスにむしゃぶりついていた。

「んぅ…ぁ……んぶ」

 直に触れたペニスに思わず口を離しそうになって、もう一度やんわりと後頭部を押さえられ、俺は仕方なく勃起して、先走りの涙を零しているペニスを、ぬちゃっと粘る音を立てて扱いていた。
 どれだけ興奮してるのか、もう前後の見境とかなく上下に擦りながら、爪の先で鈴口を引っかくと、腰にズンッと来る快感にビクンッと身体が震える。
 自慰行為とかあんまりしたことがないってのに、何が悲しくて男のモノを咥えながら自分のペニスを扱かないといけないんだー…と、悲しいはずなのに、俺は思いきり興奮してて、兵藤のペニスの先端をぢゅっと吸って、にちゅにちゅと音をさせて扱く手の速度を上げていた。

(も、どーなってんだ、俺…もち、イイッッ…)

「ぅあ!…んぅ、あ、…あッ!…ク…イクぅッッ」

 思考回路が馬鹿になったみたいに夢中で扱いていた腰に意識が集中して、俺は思わず咥えていた兵藤のペニスから口を外すと、伸びる唾液を唇に滴らせたまま歯を食い縛って、びゅくんっと白濁を吐き出してしまった。 
 思い切り吐き出して、余韻に身体を震わせていたら、兵藤のクスクスと笑う悪魔の声がした。
 羞恥に顔を真っ赤にしてハッと顔を上げたら、ビュッと熱くて粘る白濁とした粘液が顔中に飛び散って、慌てて目蓋を閉じていた俺はムッとする雄の匂いに眉を寄せてしまった。

「イク…ってちゃんと言うんだな。AVみたくて、エロかった」

 最後は自分で扱いたのか、俺の頭に片手を置いたまま、狙いを定めるみたいにペニスを掴んで淫らな笑みを浮かべている兵藤が、んなことを言うから、俺はドロッとした精液を顎から滴らせながら唇を尖らせただけで何も言わなかった。
 まさか言えるワケがない、カタラギに『言え』と言われてから、そんなにしたこともなかった自慰で『イク』と言えるように練習してるなんてな…俺、もしかして脳みそ腐ってんのかな。

「エロかった…じゃねーよ!どうしてくれんだ、顔にぶっ掛けやがって…んぐッッ」

「騒ぐなよ。誰か来たら困るんだろ?それより、舐めて大きくしろよ。ここからが本番だろ?」

 兵藤の唆すような声が、ふと、俺を不安にさせた。
 顔の青臭い精液を腕で拭おうとしていたら、問答無用で乱暴に突っ込まれて、一度イッて少し小さくなっていたペニスは、それでも口腔の滑りを感じるとすぐにグンッと硬度を増して、すぐに俺の咽喉を圧迫した。
 最後までする気なんかサラサラないんだろう、すぐに引き抜かれたペニスを必死で追っていた俺の舌に、唾液の細い糸がツゥ…ッとのびて、兵藤は尻上りの口笛を吹いた。

「…っとーに、エロイな、相羽。俺、その顔でもイキそう」

 ニヤッと笑って、仕方なくトイレットペーパーで顔を拭って胡乱な目付きで睨んでる俺を、欲情した双眸で繁々と見下ろしていた兵藤は、すぐに顎をしゃくりやがるから…悔しいけど俺は、本来はコレが目的なんだからと自分に言い聞かせて、ノロノロと立ち上がると、性悪なエヴィルに背中を向けた。
 便器を跨ぐようにして給水タンクを掴んだら、殆ど同時に、兵藤は乱暴な…と言うか、性急な仕種で俺のズボンを一気に引き摺り下ろしたんだ!

「…ッ」

 冷やりとした空気を素肌に感じて、思わず身震いする俺の尻の肉を掴んだ兵藤は、何も言わずにグイッと割り開いた。
 本来ならそんな場所、絶対に人目に晒すことなんかないって思っていたのに…俺はギュッと目蓋を閉じると同時に、唇を噛み締めてその衝撃を覚悟した。
 けど…

「…ぁ」

 想像していた衝撃はなく、昼間は100%の力が出せないとかで、鳴りを潜めているエヴィルの本性の一部だけ垣間見せる兵藤の、人間では有り得ない長い舌が、粘る粘液に塗れたまま、ずちゅ…っと、肛門を貫いて直腸を犯したんだ。
 ペニスと違ってゴツゴツした感触がなくて、まるで何か、軟体の生き物に直腸内を這い回られてるような奇妙な感触は、それでもすぐに、俺の快楽のポイントを見つけて攻めるから、自然と甘えるような声が出て恥ずかしくて恥ずかしくて死にそうになる。
 もう、誰か俺を殺してくれ。

「…ぅあ!…ゃ、あ……んッ」

 長い…もう別の生き物と化している舌が犯す肛門に、その唾液の滑りを借りて、兵藤はゆっくりと指を挿入してきた。
 直腸の内部を思う様、蹂躙される感触に身震いしている俺の、睾丸の裏のあたりにある前立腺に触れられた瞬間、俺のペニスは完全に勃起してぶるんっと震える。

「ひぁ!…ぅあ……ッ」

 思わず揺れる腰を抑えることができず、俺は縋りついたタンクを掴む指先に力を入れていた。

「…カタラギにこれぐらい解してもらえりゃ、んなにキツクねーんじゃねーか?」

「や!ひぃ…ッッ!んんッ」

 ビュルッと舌と指を同時に引き抜かれて便座の蓋に白濁の粘液を撒き散らしてイッた俺の尻を片手で掴んで、兵藤は笑みを含んだ声でそんなことを言うと、空いている方の手で既に勃起してそそり立っているペニスを掴んで扱いたみたいだった。
 大量の粘液を滴らせる肛門に灼熱の鉄の棒をオブラートで包んでいるような、硬い感触で擦られると、俺は必死で首を左右に振っていた。
 もう、頭はショート寸前で、自分がどんな痴態を演じてるのかも判らなくて、口の端からよだれを零しながら半端な目付きをして背後を振り返ろうとした。
 でも、できなかった。

「…!!」

 一気に貫かれた衝撃に、残っていた精液がビュッと飛び出して、もう何度目の絶頂なのかも判らないまま、俺は兵藤に揺すられるに任せて脱力していた…のに、兵藤を咥え込んでいる肛門の感覚だけは嫌にリアルで、生々しい息遣いに煽られたように、男に犯されている事実をまざまざと思い知らされた。
 自分が選んだことでも、これで良かったのか、本当は何も判らないんだ。
 狭い個室の中、便座に体重を預けるようにして高々と片足を抱え上げられた俺は、湿った音を立てて出入りする張り詰めた怒張に追い上げられるようにして、気付いたら自分で腰を振っていた。
 もっと、もっと奥を突いてくれ…そう言っているみたいで、脳内では羞恥にやめてくれ!と叫び出しそうなのに、目許を染めて口許からよだれを垂らしてるような情けないツラしてんじゃ、説得力も何もあったもんじゃない。
 程なくして、兵藤が低く呻くと、大量の溶岩みたいに熱い精液がドプ…ッと直腸内を満たして、俺は反射的に射精していた。