エッチの後はいつだって気怠いが、俺は緩慢に伸ばした腕で床に落ちた箱を拾い上げながら上体を起こして、傍らで惰眠を貪っている洋太に訊いた。自分の犯ってる姿を見て喜ぶほど悪趣味じゃないが、これのどいつが洋太を喜ばせたのか知りたかったんだ。どの体位も淫らだが、必ず俺の横顔や顔が写り込んでいる。
まあ、コレで脅そうとしていたんだから当たり前だけど、でもホント、やーらしく喜んでるよな俺。
ほとんど全部、痛そうな表情なのに口許が笑ってる。
「ん…光ちゃん…」
伸ばした太い腕で俺の腰を抱き寄せて頬を寄せながら呟く洋太に、俺はその身体を揺すりながらそうじゃないんだと声を少しだけ荒立てた。別に怒るほどのことでもないんだけど、俺はどうしても訊きたくてその太い腕を軽く抓ってみた。
「んん…なに?どうしたの?」
「この写真のなかでどれが一番好きなんだ?」
「う!?」
目の前で自分の痴態が写し出された写真の端を口に咥えて笑っている俺を見上げて、洋太は顔を真っ赤にしながら横座りしている俺の腰に腕を回しながらモゴモゴと呟いて俯いた。
「あん?聞こえねって、洋太。お前さぁ、けっきょく俺から聞き出されちまうんだから、もう最初から言った方が楽なんじゃねぇの?」
その顔を覗き込もうと身体を本格的に起した、写真を咥えたままの俺からそれを優しく取った洋太は真っ赤な顔で確認すると、『これは違うよ』と言ってベッドの下に落としてしまった。それから徐に起き上がり、俺の傍にある箱を引き寄せて、やけにニヤけた顔で1枚を選び出したんだ。
チッ!目の前に本物がいるって言うのに、いったいどんな痴態を演じてる俺が好きなんだ!?
俺は洋太の手からそれを奪い取って、胡乱な目付きで見下ろした。
見下ろして、思わずキョトンッとしてしまう。
「洋太…これ」
「うん。それが一番好きなんだ」
小さな俺が片目を閉じて擽ったそうに笑ってる。その頬に、キスしようとしてるやっぱり小さな洋太。
周りで笑ってる級友たち、懐かしい幼稚園の写真…
「…って、嘘だろうがよ!この野郎ッ、俺さまの目は誤魔化せんぞ!」
確かに大事にはしてるんだろうが、良く見てるわりには手垢もそんなについていないし…胡散臭いっつの!
「…う、やっぱり?…実は」
そう言って往生際の悪い洋太の差し出した写真は、確かに手垢もついて、他の写真より草臥れてるみたいだけど…なんだ、こりゃ。
「こんなのがお前を興奮させるのかよ?」
呆れたように訊くと、洋太は顔を真っ赤にして頷いた。
ヘンなヤツだ。
名前でも呼ばれたんだろう、熱に浮かされた顔を嬉しそうに綻ばせてカメラを見ている俺。両手は、抱き締めてくれと強請るように伸ばしてる。たったそれだけの写真なんだ。
エッチな部分は全然写っていない。
首筋と鎖骨のところにキスマークがあるくらいで、なんと言うこともない写真じゃねぇか。
まあ、誘ってるって言われればそんな気もするけど…
「この顔、すっごく好きなんだ。これだけは、僕の趣味で撮っちゃった」
じゃあ、他は違うのかよと突っ込みたい気分だったが敢えてそれを無視して、俺は暫く考え込んだ。
「こ、光ちゃん?やっぱり、怒っちゃった?」
オロオロと黙り込んだ俺の顔を覗き込んで来る洋太に、俺は徐に顔を起すと、とびきり極上の笑みを浮かべて両手を差し出した。
首筋と鎖骨のキスマークがネックなのかもしれないけど、全身にキスマークがついてることは敢えて目を瞑ってもらおう。
洋太が喜ぶのなら、俺はいつだってこんな表情をしてやるのに…つーか、できるのに。
お前の傍にいれば、いつだって俺は極上の笑顔ができるんだ。
それとも生身じゃダメなのか?
抱きつこうとする俺を掻き抱いた洋太は、まるで有無を言わせずに深く口付けてきた。下半身に当たる部分が熱くなってるから、なるほど、本当に効果覿面だ!
やった、洋太を欲情させるツボを発見したぜ!
俺はしめしめと内心で喜びながら、洋太の要求するどんなことにも応えようと口を開いてその舌を迎え入れた。
コイツには何度だって抱かれたい。
だって、そうすることで愛されてるんだって身体で感じられるから。
俺は本当にコイツに参ってるんだ。
洋太、好きだ。大好きだ!
骨が軋むような力強さで抱き締められて、俺は喜びに震えながら間もなく訪れるはずの快感を夢見てうっとりと微笑んだ。
ああ、俺って本当に幸せ者だな!
…洋太、学校でも俺を愛してくれよ(笑)