Level.5  -デブと俺の恋愛事情-

「なんだよ?もっと声を出せよ!」

「なんだ、こいつ。怯えてんのか?」

「まさか!あの里野光太郎だぜ!?」

「ケッ、散々梃子摺らせやがって!」

 口々に下卑た揶揄をする男たち、俺が前に叩きのめした連中は俺の肌に忙しなく指を這わせている。性急な仕草はまるで初体験のガキみてぇだ、バカなヤツらめ。
 唐突に口に含まされたものを、見ないようにして舌を動かす俺の下半身を、高野は尻を叩きながら穿っている。誰にも洩らさねぇとか言って…まあ、洋太のことは言ってねぇみてぇだが、俺のことはちゃっかり連中にくっちゃべってやがった。
 ほぼ毎晩、こいつらに犯されている。
 初めこそ大人数に身体が疲れ切ったが、今は無難に遣り過ごすことを覚えたから気絶することもなくなった。
 せめて安ホテルにでも連れ込んでくれればこれほど身体に負担はないんだろうけど、ヤツらときたら、手っ取り早く犯るためにどこかの廃工場の跡地に連れ込みやがる。犯りっぱなしで行くから、家に帰るまでに身体はクタクタになる。身体の奥に注ぎ込まれた白濁も気持ち悪いし、身体中についてる唾液にも吐き気がする。
 連中が何度目かの絶頂に達した頃、漸く俺は一度目の快感を覚えるんだ。
 それも、快感らしい快感じゃねぇけど…

「見ろよ!里野のヤツ感じてるぜ!」

 目敏く見つけた誰かがそうバカみてぇに騒いで、他の連中も何が嬉しいのか、やけにハイになってる。コイツら…薬でもやってるんじゃねぇだろうな。
 俺は、愛する洋太と清く健康的に犯るために、タバコとか薬は絶対にしないことにしている。
 それが俺の信条だ!アイツが好きだと言った俺の匂いが、タバコとかそんなもんで汚されるのだけは許せねぇ。洋太が俺を抱くときに幸福な気分を少しでも味わってくれたら、俺はそれだけで幸せだったんだ。
 だから、今のきったねぇ唾液だらけのこんな身体、消えてなくなっちまえばいい。

「よーう、光太郎。何を考えてんだぁ?」

 トロンとした濁った目で俺を覗き込んで来る高野は、タバコみたいなものを咥えてる。やっぱり薬かよ。冗談じゃねぇや。

「おら、お前も吸えよ。サイコーな気分になるぜ?天国までエスカレーターで行こう」

「ふざけんな!エレベーターに乗って逝っちまえッ」

 野郎のモノが引き抜かれた口許に無理矢理押し込もうとしたそれを吐き捨てて、俺は高野を、そして俺に圧し掛かろうとしていた連中を蹴倒してやった。
 白濁が漏れた口許を拭いながら、俺は怒りに震える口調で高野に怒鳴りつけた。

「俺はお前に抱かれてやるとは言ったが、薬にまで手を出すとは言ってねぇ!あんまりふざけた真似をすると、てめぇらまとめてぶっ殺すぞッ!!」

 薬で完全にラリってる高野を除いた、いくらか正気を残していた連中は怯えたように竦みあがった。寂れた廃工場の跡地で、全裸で立ってる男なんか普通なら鼻で笑って殴りつける連中でも、ことこの界隈を賑わせているこの俺さまを、どんな格好だって一度は病院送りにされたヤツらなら怯えても当然だ。

「あーあ、もったいねぇ。コイツ1本で1万はするんだぜ?」

「お、おい。こ、高野…」

 俺の般若のような表情に竦みあがった連中が、トロンとした表情で薄汚れた床に落ちている薬を拾い上げる高野を宥めるように突付いたが、高野は物騒な表情をして俺に近付いてきた。
 自然と、この百戦錬磨の俺が後退さる。
 ラリッた連中となんか何人とでも殴り合った、でも、コイツの場合は、なんかゾッとするんだよな。尋常じゃない目付きのせいかもしれないけど…

「そら、男のチ○ポをしゃぶれるんだ。薬ぐらい咥えられるだろ?」

 ゲラゲラと下卑た笑い声を上げて俺の顎を嫌というほど掴み上げた高野に、俺は苦痛に眉を寄せながら、それでも絶対に吸うもんかと口を真一文字に引き結んでヤツを睨み据えた。
 顎は…クソッ、明日には鬱血してるんだろうな。

「なんだよ、強情だなぁ…じゃあ、口を開けるようにしてやろう」

 そう言って、ヤツは俺の目にその真っ赤に燃える炎を押しつけようとしてきやがった!
 ギョッとしてその腕を離そうとしたが、クソッ、薬でラリッたヤツの力の強さにはホント感心させられるぜ。いや、感心してる場合じゃねぇんだけど!

「ウッ!?」

 こ、こいつら…
 まるで、今までの復讐だとばかりに竦みあがっていた連中がやけに興奮して、高野の腕を掴んでいる俺の手を引き離そうとしやがるんだ!
 じ、冗談じゃねぇ、この手を離したらあの炎が俺の目を焼くんだ。
 そんな…そんなのはぜってぇに嫌だ!二度とまともに洋太の顔を見られなくなるなんて…!
 こんな風にムチャクチャになった身体じゃあ、どっちにしたってもう洋太に抱かれることなんてできねぇけど、それでも俺は、洋太の顔ぐらいはまともに見たいんだ!
 うう…クソッ!畜生ッ!誰か、誰か…助けてくれ!