勿論、べリーヌの一番端っこに住んでいた俺がジャスパーの一番べリーヌ寄りの村に行くには、徒歩と言うこともあって30日から90日は掛かるんじゃないかと思ってる。
慎重かつ迅速に進みながら、弓の腕も上がったし、最近では野生のウサギだけではなく、大物の野生のイノシシだって狙えるようになった。
道中で不足するから出来るだけ野営地…って言っても、冒険者の為のベースキャンプじゃなくて、俺が勝手に作った場所だから粗末なモンだけど、その場所でポーション作りに精を出す。
ポーション作りは先ず地面にある土や川辺から持ってきた砂で瓶を作り、それから道中で見つける馴染みの薬草やら新種の薬草を欠かさずに採取して腰ポーチに入れてあるから、それを取り出して洗いもせずにそのまま瓶にギュウギュウに詰め込んだら手を離す。すると不思議なことに薬草でパンパンの瓶が宙に浮かんでいるんだ。
既に魔法が発動しているのか、それから瓶に両手を翳してホアアアーッと大雑把にポーションのことを考えると光り輝いてポンッと液体が満たされた瓶が転がって完了となる。自然に落ちてもこの場合は魔法が発動してるから割れない。普通なら割れる。
これだけ、特に魔力切れとか体調不良も感じないし、あと50本作ってもへっちゃらだったりする。疲れるのは材料の薬草採取って言うのがね、たははは。
1日の終わりには必ずポーションを作るようにしているから、リュックの中はポーションの山だと思う。最初の村でギルド登録したら、何本か試しに売ってみる予定だ。
商人熊がどれだけオマケしてたのか、それとも低価格にしていたのかが判る瞬間だ。
でも適正価格が判らないから何ともかんとも…ゲームでよくあるアナライズとかの解析魔法はないのかな?つーか、俺が使えないだけなんじゃ、それだったら結構辛いぞ。
よし、さっきできた薄黄色のポーションで練習してみるか。
実際、このポーションが何に効くか判らないんだよね。初めて見る薬草をぶち込んだからさ。
「落ち着けー落ち着けー、集中集中!アナライズ!」
適当に呪文らしきモノを唱えて、片手を翳しながら掴んでいる小瓶をじっと見据える。
…。
……。
………。
…………。
……………っダァ!ダメだダメだ、途中から睨み据えたけど無理だった。息だって止めてたかもしれん、これじゃあ解析する前に俺が倒れるだろ。
呪文がダメなのかな?じゃあ…
「解析!」
意気揚々と言ってみたけどこれもダメだった。
生活魔法も出来ないのに戦闘系魔法が使えるかっての!解析はモノだけじゃなくて、ヒトや魔物や動物にも使用できるので、カテゴリは戦闘系スキルになる。
これを取得できれは冒険者ギルドに登録に行く時、得意なのは弓矢とポーション作りと解析ですって言えるんだけどなー、今のままだと魔法スキルなしの登録になるからちょっとな。
ポーションは生産系魔法で、冒険に役立つのに、何故か戦闘系とか冒険者スキルとして認められないんだよ。理由はやっぱり俺には判らんけども。
大いなる乙女ゲーム神の御心か、若しくはコズミック・パワーの賜物か、自分でも何言ってるか判らん状態だから練習練習!
「見えーる見えーる、バッチリ見えるよポーション!」
ヤケクソで言ってみたら…不意にぼんやりとポーションの前に半透明の青いウィンドウ?みたいなのが現れて、ボヤッと文字が浮かび上がった。
こっちの文字だけど、転生者の記憶の俺だけど、文字練習道々でしてたし俺以前のフィラの記憶もあるから読めることは読める。
それによるとこのポーションは…
「エリクサーだって?世界樹の雫に次ぐ万能薬だ。価格は適正買取価格で20万ティン!すっげー!!」
道端に自生する薬草を摘んだら大金が生まれるシステムって凄くない?俺、まじビックリだわ。
これ売ったら和の大陸に行けるんじゃね?
レベルはどうなんだろ?えーっと、3かー、思ったより低いな。
因みにポーションのレベルは10まである。
これレベル3で20万ティンか…考えると怖いな。
因みに、実はこの世界にも世界樹ってのがあって、どの大陸にも根付くことがなく、今は空高く漂って眠れるドラゴンが身体で取り囲んで護っているんだとか。世界樹の雫ってのは魔法とか必要なくて葉に溜まる朝露を瓶に入れると世界樹の雫になって、死者すら生き返らせると言うミラクルレアの秘薬なんだと魔女のばっちゃが教えてくれた。
世界樹の雫は無理でも、エリクサーレベル5ぐらいまでは狙えるんじゃないかな。道端の草、いっぱい摘むぞー!
他の薄青系ポーションを見えーる見えーる解析で見たところ、商人熊がお墨付きにするだけあって、レベル7〜9の出来だった。適正買取価格は900〜1000ティンだから、商人熊はちゃんとほぼ適正価格で買い取ってくれていたってワケだ。
まとめ買いだから誤差込みなんだろうな。
ポーションは良しとして、解析ができるとなると今の自分のレベルとかスキルとか知りたいよな?断然、し・り・た・い!
「見えーる見えーる、バッチリ見えるよ!」
ホント、人前で唱えたくない呪文を自分の腕に向かってちゃんと言ったってのに、何故か半透明の水色のウィンドウが開かない。
あれ?変だな。
まさか、対象物の名前を言わないといけないのか?ポーション作りはホワワワーでどうとでもできるくせに、どうして難しくもなさそうな解析で恥をかかなくちゃいけないんだ。
必要ないにしても周囲の気配を窺って、頬をさらに薔薇色に染めて、クゥッと屈辱に耐えながら自分の腕に向かってもう一度!
「見えーる見えーる、バッチリ見えるよおーれ!」
まあ、とは言えノリノリなんだが。
ノリノリなのにウィンドウが開かない…レベル不足で対人は無理なのか、調子はいいのに魔力切れか。ポーション作りは無限じゃねぇかってほど無尽蔵のくせに、解析で魔力ダウンとか嘘だろ?!
「見えーる見えーる、バッチリ見えるよフィラ!」
これもダメ。
「見えーる見えーる、バッチリ見えるよフィーラ!」
うんともスンとも言わない。
「見えーる見えーる、バッチリ見えるよフィーラちゃん!」
ブゥンッと無機質な音を響かせて半透明の水色のウィンドウが開きやがった。きっとこれアレだろ、俺を試してるか揶揄ってる類の呪文だろ。責任者誰だよ、出てこいよ。
とかブツブツ悪態を吐きながら確認すると、俺の氏名、リィンテイルじゃなくて通り名のフィラになっているのが表示されていて、その横に年齢とヒト族とある。てっきりこの美貌はエルフとか精霊のハーフかと思ったのに、ヒト族だってよ。フィラってパネェな。
体力と魔力が数値化されてるのは有難いけど、この年で体力150で魔力0って普通なのかな…って魔力0?!魔力zero?!魔力ゼェロゥ???!!!
どう言うことだ、じゃあどうやってポーション作ったり解析見れてるんだ?!
慌ててスクロールして攻撃力とかすっ飛ばしてスキルを見ると。
・弓矢射撃レベル3
・ポーション作成レベル95
・解析レベル1 NEW!
…スキルレベルって普通マックス20だぞ?
ポーションのこれ普通のゲームだったらほぼカンストだぞ、何かの間違いじゃないのか??!え、でも言われてみるとホワワワーで何とかできるレベルって普通に考えてもおかしいよね。今気付いたけど、そんなモンだって思ってたけど、俺のポーション作りの過程とか色々おかしいよね!
さらに下に備考欄みたいなのがあるからスクロールしてみたら。
・祖父の弓作りの加護 弓作りレベル10 NEW!
・孤高なる寂しき魔女の加護 学習レベル10
・美と愛欲の女神の加護 魅了レベル10
・大いなる自然の加護 薬草知識レベル∞
・癒しと死の神の加護 ポーション知識レベル∞
・厳格な戒めの大地の加護 魔力生成レベル70
加護の量がバケモノだ!普通、加護なんてSランク以上から付与されて3つが限界だぞ?!何より大いなる自然の加護からの意味が判んない!!
待って待って、知識レベル無限って何?!
魔力生成レベル70って!昔、大賢者が大変な修行の末に自然の大気や大地から純粋に魔力を生成する究極の技を編み出してそれに魔力生成と名付けた、マックスレベルは15が限界だったって魔女のばっちゃの本に載ってたぞ!
…なんだろうこれ、異世界転生した俺へのご褒美チートかな?
お疲れで脱力しちゃってえへへと笑った俺だけど、ちょっと待てよ、解析できる魔女のばーさんはこれに気付かなかったのか?
気絶してる場合じゃないし、よく考えてみよう。
あの商人熊だって解析は使えるから、よく俺のことを見ているようで、偶にニヤニヤしてて気持ち悪かったけどそれはこの結果が見えているからじゃなかった。
見えていたら、あんなエロい目付きにはならない、それどころか、金の成る木だって商人魂でもっともっとギラギラした目付きになっているはずだ。
もしかしたら他人には『美と愛欲の女神の加護』だけが表示されているんじゃないのか?
バグかな…よし!見なかったことにしよう!
多分だけど、ポーション作成レベルも他人には見えないようになってるのかも。
冒険者ギルドでスキルチェックの時、どう表示されるんだろう…まんま出たら詰む。多分中央のお偉いギルド長とか来るか連行されるかして、王族のお抱えとかになって良くて飼い殺し、悪くて好色だって噂の王太子(攻略対象、大事なことだから2回言うけど攻略対象)の慰みモノ兼飼い殺しで若くしてダイするんだぜきっと。
い・や・だぁぁぁぁぁ!!!
両手で顔を覆って無言で天を仰ぐ。
こんな落とし穴があるとか恐るべしだな乙女ゲームのBL要員!
何としてでも誰かと絡ませようと思ってるな?どうしても俺を男に抱かせる方向に進めようとしているだろ。
今までの他人の見え方を信じて登録に行くか、それとも諦めて地道な狩猟生活で小銭を稼ぐか…でもそんなことをしたって、村や町に入れば冒険者がいる。本当は商人熊みたいに勝手に解析で覗き見るのは御法度だし最大限の失礼になるけど、一定数、面白半分で覗くヤツもいるし、気になるヤツなら尚更覗く商人熊みたいな変態だっているんだ。
隠したまま生きるなんて土台無理な話だったんだ。
ならもういいや、ジャスパーの最初の村で冒険者ギルドに加入してみよう。
この旅の間に誰とも出会さなかったから気が気じゃないけど、クヨクヨしたってどうしようもないんだ。バレたら潔く首を括る。だって王太子の愛妾とかぜってー嫌だもの、俺にだって選ぶ権利ぐらいあるだろ。
俺、前世も今世も順応オバケなんだからへっちゃらだ。寧ろ苦境に打ち勝ってやるからな、覚えてろよ乙女ゲーム神め!!
よっしゃ!そうと決まればサクサク行くぞ。頑張るぞ俺!